飴玉と目玉

「これあげる、クリスマスだから」

 

「……飴玉?」

 

「ぶどう味だよ。チラシ配ってるお兄さんが仕事早く終わらせたいからっていっぱいくれたんだ。僕食べれないのにね」

 

「貰い物をプレゼントにするのは感心しないなあ」

 

「だってもう僕なんにも持ってないし、食べてしまったのは君でしょう」

 

「要らないならいいけど」

 

「どうせだから貰っておくよ……結構美味しいねこれ」

 

「へえ、それは良かったね」

 

「でも」

 

「……なに?」

 

「君の目のほうが美味しかったなあ」

 

 

長い指が前髪に隠れた場所をすうっとなぞる。伸びてきた手に嫌な記憶がよぎり反射で肩が跳ねた。 

 

 

「……もう無いよ」

 

「勿体ないことしたなあ、次はもっと大事に食べなきゃね」

 

「次なんて」

 

「希望はそう簡単に捨てちゃいけないだろ?」

 

「早瀬が言うのそれ」

 

「例えば、君が生まれ変わったらまた同じ色をしているかもしれない」

 

「また殺されるっていうの?勘弁してよ」

 

 

ああでも、また忌々しい父親と同じ目を持つくらいなら、食べられてしまったほうが良いかもしれない。……あくまで、もしもの話。