死体の目

 

瓦礫に屑鉄、飛ぶ火の粉。時々なんか見たことある気がするやつの首。

いややっぱり知らない顔?少し眺めてみるも思い出せない。

名無しの権兵衛の首を蹴っ飛ばすと床に空いた穴にころんと吸い込まれて行く。

いえーいゴール、アキナ選手が一点先取でございまーす。

 

小声で呟いてからから笑う。死ねば動かないただの肉だ。

それをどうこうしたって別に良いじゃないか。

まあ生きてても五月蝿い肉なだけだけれど。

静かなぶん、死体の方が好ましい。大人しく言うことを聞いてくれる。

 

頭の上で爆発音が響く。間近で花火が咲いたみたいだ。

誰の命が散ったのか。派手なのは楽しいけれどもう少し原型を残す殺しかたをしてくれないかな。

使いづらいのばっかり転がっている。

 

ぱらぱらとジャケットに降ってきたコンクリートの欠片を歩きながら払った。

そろそろ天井ごと落ちるかなあと階段に早足で向かう。

この体は借り物だ。壊せば持ち主に何て言われるか。

完成度は称賛に値するが肉ですらない無機物に何故執着できるのか。

人の考えは蛸には分からないということだろう。

 

そういえば先ほど先に行った青年の獲物は包丁だった気がする。

調度いい死体を見繕ってくれないかなあと期待しながら一つ飛ばしで階段を降りた。崩壊は後ろまで迫っている。

壺屋アキナの皮を被った蛸にこの塔を墓標にするきはさらさらなかった。