喉元過ぎても

 

 

 

「なら、冷ませばいいでしょう?」

 

 

皿の隅にぽつんと置いていかれた餃子を見ながらミズノエはどうしようかと考えあぐねていた。

熱いまま口に入れると火傷するなら、冷ませば食べれるようになる。当たり前のことだ。

家で自炊するときは一通り作って冷蔵庫で冷やしておくので大抵の物は食べることができる。

ただ、この場で自分が口に入れても平気な温度まで待つとなると。

 

…………お昼の休憩って何時まででしたっけ。

 

 

 

 

 

 

 

ぴ、がこん。

青いボタンを押して出てきた冷たい缶の蓋を開けて中身をごくりごくりと喉を鳴らして飲み込んだ。

ひりひりと微かに痛みを発する舌に冷たいお茶が心地良い。

手袋をした指で唇をなぞってみる。赤くなっていなければ良いのだが。

出来立てだと言っていた餃子は時間が経っても充分熱を持っていて、一口噛み締めるごとに溢れる肉汁が口内を隈無く刺激していった。

辛うじて飲み込んだが喉を過ぎても胃に至っても熱は主張し続けてきて正直ちょっと泣きたくなる。

言われた通りに冷ませばこんな目には会わなかっただろうに。

 

 

でも、だって、彼女が美味しそうに食べるから。

 

味わってみたいなあ、なんて。

 

 

冷めてしまえば食感も変わるし、油なんかは固まってしまう。

体温が違うのだからどう足掻いても同じものは味わえないのだがそれでも食べてみたくなったのだ。

案の上の結果となってしまったが。

 

こういうのを魔が差したと言うのでしょうねぇとミズノエは呟くと、残りのお茶を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

(餃子いただきました)