有効活用

慶二郎の後ろを着いて歩きながらスプリンクラーのない場所にまできた一縷は濡れた髪をかきあげる。

能力を使ったせいか少々息が上がっているのを感じた。

スプリンクラーで周りに水が多くあったので多少力を加えるだけで水の弾丸を使用することが出来たが、それでも何度も使えるものではないようだ。

やはり、慣れ親しんだやり方のほうがいい。

一縷は白衣のポケットから魔法瓶を取り出した。

 

 

「何持ってるかと思ったら……どうするのそれ?」

「結構、役に立つわよ?」

 

 

きゅるりと魔法瓶の蓋を開ける。

中に入っているのは湯だ----薬入りの。

ふわりと浮いた湯気を能力で纏めると、さらに空気中の水分で蒸気を作り混ぜ合わせた。

出来たのは薬入りの一塊の霞。

 

 

「即効性の睡眠薬入りよ。触れないし飛ばせもしないからそうそう防がれることはないと思うわ」

 

「……それは出来れば吸いたくないね」

 

「こういうものの操作には自信があるから安心していいわよ」

 

 

手元の霞を足元に移動させながら一縷が言ったところで目の前の道が二つに別れる。

 

 

「さてどっちかな」

 

 

立ち止まり思案していると、右手から破壊音に叫び声悲鳴。

ずいぶんと楽しそうな様子で。

 

 

「……こっちだね」

 

「……そうみたいね」

 

 

思わず顔を見合わせて笑う。

 

 

迷子発見までもう少し。